人生は始まる時から苦痛に満ちている

あなたの先輩Aさんは悩んでいた 25歳で結婚して12年間子供に恵まれなかった Aさんの妻は一つ年上でもうすぐ40歳になる もう子供はあきらめようかと思い 二人で旅行に行って気休めにでもなれば これから二人だけの人生を楽しむきっかけになれば 海の近くの宿に泊まって 波の音を聞きながらゆっくりと眠っ…
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未確認生命体

「質問がある。答えてくれ。アレはいったいどこで見つけたのか。」 「先輩から預かった。ぼくに胎児を守ることを依頼した。」 「アレは胎児ではない。何かわからないものだ。」 「あなたは胎児をどこにやった? まだ産まれる前の微妙な時期なのに。」 「きみはなぜアレに対してそんな思い入れがあるのだ? 」 「だれだってこ…
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旅のはじまりか

ゴミの集積場はどこだろう ぼくはふだんから日常生活に無関心だった この世に必要でないものはなにか 捨てることはできず 何でもかんでも部屋に置いていた 妻が時々それを袋に詰めてどこかに持っていった 「あなたは片づけられない人」 妻はいつもぼくをそう呼んだ もしかしたらあの女のピアスも妻が捨て…
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胎児を探す旅に出る

胎児はだれにも育てることはできないのか やがて女が家に乗り込んできて無造作に床を探しまわる 妻は自分の部屋に入ったきり出てこない 自分の夫が女を連れ込んでも無関心だ あなたもいっしょに探してよ大事なピアスなんだから 胎児は捨てられちゃった あんなの拾ってくるからよ それでもぼくはあの胎児を自分の…
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妻と胎児のことについて話す

これは正確には胎児と言わないと思う 妻は理論的に話しはじめた あなたはこれを夢で見た それを現実と混同してここに持ち帰った だからこれは実際には存在しない何物かで ただここにあるという想像のしろものにちがいない そうだとしてもたしかに今はここに生きている なぜかきちんと生まれようとして懸命に体を…
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胎児のこと

警察は胎児を受け取らなかった 白い四角い箱に丸い透明の殻で包まれた胎児は この世の生き物として認めてもらえなかった 何か不思議なことや常識外のことは みんな避けて通ろうとする あなたもその辺のゴミ箱にでも捨てれば 女は軽い口調でそう言いながら 忘れ物はピアスだと思う だからしばらく掃除機は…
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社会労務士試験魔の1点

選択問題総合31点 択一問題総合52点 ただし選択問題で2点が2科目 それも簡単な問題でやらかした 基準点に達しない場合には不合格 はい、また来年 また歯ぎしりしながら 来年に備える きっと 自分の甘さを悔いながら 1年の苦さを噛みしめるのだろう まだ厚生年金の特別支給ま…
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無欲という欲

苦しみを浴びながら 今まで欲にもてあそばれてきた ここまでたどりつき 痛みやむなしさや せつなさや絶望感に 錐揉みぐちゃぐちゃにされながら とうとう無欲という欲にたどりついた ここにはお金もなんの意味もなく 明日も今日もなく 苦悩もあきらめもなにもない ただ真空の風が吹き …
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ひとり

生まれたときに泣かなかった 今でも泣いたことはない 泣くことは演じること 声は演出 自然に なにもできない 人工的なものに囲まれて 生きることを実務と ただ今まで ルーティン通り 生きて 余命を終える だれかの声が 年の瀬の鐘のように 耳をすべってゆく …
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帰りたくない日

やることなすこと徒労におぼえ 気力もことばもなにも出ない 前から何か 知り合いの笑顔 抱き寄せ笑い合う親子 チキンを買う列に並びながら 思わず顔を伏せる 今日はケーキもチキンも食べたくない 一人で暗い映画館の椅子で まどろみながら ただ無になること 存在を消し去ること …
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踊るべきは君なのだ

竹笛のかすかな鼓膜にささやくような音 傀儡はふと首を180度後ろに向けた 刺客は眠っている 青い梅の夢を見ながら 天地を支えている大亀に 甘く薄めたアヘンの煙を 吹きかけるいたずら まるで命は知らない国での忘れもの 剣からほとばしる光はオレンジに または真っ白な雪に溶けて なに…
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冬あそび

かじかんだ手から月のしずくがこぼれ落ちる 歩く道は土だ いつかのあの日の石ころが 緑色に光っている 寒い夜 記憶とせん妄が往き来して 足は谷間に向かっている 校舎の裏庭で煙草に口をつけたとたん まぼろしはクチナワに変わり やがて魂は真っ黒に壊死してゆく 夜は友だち 見えな…
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いさぎよく

いさぎよく生きるとは あらゆる困難の前で 静寂な時をきざむこと 今与えられたことを ゆるぎなく遂行すること あたえられた時間に 満足しながら ただひたすら 一秒の一億分の一まで あますところなく 使い切ること
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取り切れていない癌が残る

それもまたそれ かくあることを 受け止めて 道を歩く 歩きながら 股間にあたたかいものが あふれてゆく また聖水があふれだし パットをあつくする もしかしたら それは美しい射精かもしれない なくしたものを 生まれたての行為で代行する 新しい射精かもしれない …
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夢でよかった

山道を車で走る 大きな左カーブを 減速せずに まるでガードレールを突き破り 左下の湖に呼ばれているかのように 思い切りアクセルを踏みこむ あわやというところで 車はガードレールを擦りながら なんとか右車線にバウンドして 対向車と面会することなく 左車線にもどったとたん 前…
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いつもここに

前立腺がなくなってから 尿が自然に漏れてくる 紙パットで陰部を包み 紙パンツで外部の汚染を防ぐ トイレに行っても チョロチョロと漏れ出し まるで栓の閉められない水道の蛇口 にんげんはひとつのものをうしなうと さまざまなうれいやかなしみをさずかることになる いつかこの世界で だれ…
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経過不良

小さな齟齬がアラレのように降りつもり いつの間にか そこは廃墟となった コンビニ カー用品店 書店 雑貨屋 ラーメン屋 次々と店主が変わり とうとう更地のまま 十年が過ぎた 流行らない時は 場所と運を選ぶ あの頃の虫歯が痛むのか もうすぐ 新しいア…
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明るくふるまいたいけれど

なかなかそうはいかない 失った機能や臓器を前に 笑いの前にはかなさが残る 明るくすべて受け入れ 天使のように生きられると 思っていたわけではないが もう少しましに 暗くどんよりとした日々に おのれが負けそうになることを 押し戻すぐらいの明るさは 身についていると思ったが …
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よりどころ

かたまる表情 だれになにを聞いて 心が上の空になり 響いている 腹の底でミミズがうめいている このからだはどこからきた生命体か それとも人口の製造物か ところどころに欠陥があり 穴が空き 指で押すと茶色い花が開く 不気味な交配を繰り返し たぶんここまで配偶者は 頭の…
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