検温31℃

 だれもが、ひとりから四人になった。長い袖のブレーカーを裁断しながら、夜の街は、裸足で歩いていた。 完全に潰えてしまった遊びのコックテイルが、長い空の川面に浮かぶ塵たちを、舐めるように沈めていった。 腐ったミカンから邪な友情が生まれ、今夜ここでの刀剣乱舞。 涙に似たカフスボタンが置き忘れた四人目のナイフをひさいでいる。 楽な手ご…
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悪い文章

殺されたあなたを不安にさせてごめん。惑うことなく行きかう憶測に、そっと茶色い蓋をした。 目立つ夢に寝首をかかれ、グッと魂を引き戻す。運命かもしれないね。悲しい時に思わず、怒りに満ちた風船を針で刺して破裂させる。 まだ血が止まらないかい。髪の毛を切るたびに、噴き出してくる真っ赤な血の何万もの筋。 実は消えている。あなたはもう今から出かけよ…
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人生は始まる時から苦痛に満ちている

あなたの先輩Aさんは悩んでいた 25歳で結婚して12年間子供に恵まれなかった Aさんの妻は一つ年上でもうすぐ40歳になる もう子供はあきらめようかと思い 二人で旅行に行って気休めにでもなれば これから二人だけの人生を楽しむきっかけになれば 海の近くの宿に泊まって 波の音を聞きながらゆっくりと眠っ…
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未確認生命体

「質問がある。答えてくれ。アレはいったいどこで見つけたのか。」 「先輩から預かった。ぼくに胎児を守ることを依頼した。」 「アレは胎児ではない。何かわからないものだ。」 「あなたは胎児をどこにやった? まだ産まれる前の微妙な時期なのに。」 「きみはなぜアレに対してそんな思い入れがあるのだ? 」 「だれだってこ…
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旅のはじまりか

ゴミの集積場はどこだろう ぼくはふだんから日常生活に無関心だった この世に必要でないものはなにか 捨てることはできず 何でもかんでも部屋に置いていた 妻が時々それを袋に詰めてどこかに持っていった 「あなたは片づけられない人」 妻はいつもぼくをそう呼んだ もしかしたらあの女のピアスも妻が捨て…
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胎児を探す旅に出る

胎児はだれにも育てることはできないのか やがて女が家に乗り込んできて無造作に床を探しまわる 妻は自分の部屋に入ったきり出てこない 自分の夫が女を連れ込んでも無関心だ あなたもいっしょに探してよ大事なピアスなんだから 胎児は捨てられちゃった あんなの拾ってくるからよ それでもぼくはあの胎児を自分の…
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妻と胎児のことについて話す

これは正確には胎児と言わないと思う 妻は理論的に話しはじめた あなたはこれを夢で見た それを現実と混同してここに持ち帰った だからこれは実際には存在しない何物かで ただここにあるという想像のしろものにちがいない そうだとしてもたしかに今はここに生きている なぜかきちんと生まれようとして懸命に体を…
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胎児のこと

警察は胎児を受け取らなかった 白い四角い箱に丸い透明の殻で包まれた胎児は この世の生き物として認めてもらえなかった 何か不思議なことや常識外のことは みんな避けて通ろうとする あなたもその辺のゴミ箱にでも捨てれば 女は軽い口調でそう言いながら 忘れ物はピアスだと思う だからしばらく掃除機は…
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社会労務士試験魔の1点

選択問題総合31点 択一問題総合52点 ただし選択問題で2点が2科目 それも簡単な問題でやらかした 基準点に達しない場合には不合格 はい、また来年 また歯ぎしりしながら 来年に備える きっと 自分の甘さを悔いながら 1年の苦さを噛みしめるのだろう まだ厚生年金の特別支給ま…
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無欲という欲

苦しみを浴びながら 今まで欲にもてあそばれてきた ここまでたどりつき 痛みやむなしさや せつなさや絶望感に 錐揉みぐちゃぐちゃにされながら とうとう無欲という欲にたどりついた ここにはお金もなんの意味もなく 明日も今日もなく 苦悩もあきらめもなにもない ただ真空の風が吹き …
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ひとり

生まれたときに泣かなかった 今でも泣いたことはない 泣くことは演じること 声は演出 自然に なにもできない 人工的なものに囲まれて 生きることを実務と ただ今まで ルーティン通り 生きて 余命を終える だれかの声が 年の瀬の鐘のように 耳をすべってゆく …
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帰りたくない日

やることなすこと徒労におぼえ 気力もことばもなにも出ない 前から何か 知り合いの笑顔 抱き寄せ笑い合う親子 チキンを買う列に並びながら 思わず顔を伏せる 今日はケーキもチキンも食べたくない 一人で暗い映画館の椅子で まどろみながら ただ無になること 存在を消し去ること …
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踊るべきは君なのだ

竹笛のかすかな鼓膜にささやくような音 傀儡はふと首を180度後ろに向けた 刺客は眠っている 青い梅の夢を見ながら 天地を支えている大亀に 甘く薄めたアヘンの煙を 吹きかけるいたずら まるで命は知らない国での忘れもの 剣からほとばしる光はオレンジに または真っ白な雪に溶けて なに…
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冬あそび

かじかんだ手から月のしずくがこぼれ落ちる 歩く道は土だ いつかのあの日の石ころが 緑色に光っている 寒い夜 記憶とせん妄が往き来して 足は谷間に向かっている 校舎の裏庭で煙草に口をつけたとたん まぼろしはクチナワに変わり やがて魂は真っ黒に壊死してゆく 夜は友だち 見えな…
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いさぎよく

いさぎよく生きるとは あらゆる困難の前で 静寂な時をきざむこと 今与えられたことを ゆるぎなく遂行すること あたえられた時間に 満足しながら ただひたすら 一秒の一億分の一まで あますところなく 使い切ること
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取り切れていない癌が残る

それもまたそれ かくあることを 受け止めて 道を歩く 歩きながら 股間にあたたかいものが あふれてゆく また聖水があふれだし パットをあつくする もしかしたら それは美しい射精かもしれない なくしたものを 生まれたての行為で代行する 新しい射精かもしれない …
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夢でよかった

山道を車で走る 大きな左カーブを 減速せずに まるでガードレールを突き破り 左下の湖に呼ばれているかのように 思い切りアクセルを踏みこむ あわやというところで 車はガードレールを擦りながら なんとか右車線にバウンドして 対向車と面会することなく 左車線にもどったとたん 前…
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いつもここに

前立腺がなくなってから 尿が自然に漏れてくる 紙パットで陰部を包み 紙パンツで外部の汚染を防ぐ トイレに行っても チョロチョロと漏れ出し まるで栓の閉められない水道の蛇口 にんげんはひとつのものをうしなうと さまざまなうれいやかなしみをさずかることになる いつかこの世界で だれ…
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経過不良

小さな齟齬がアラレのように降りつもり いつの間にか そこは廃墟となった コンビニ カー用品店 書店 雑貨屋 ラーメン屋 次々と店主が変わり とうとう更地のまま 十年が過ぎた 流行らない時は 場所と運を選ぶ あの頃の虫歯が痛むのか もうすぐ 新しいア…
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明るくふるまいたいけれど

なかなかそうはいかない 失った機能や臓器を前に 笑いの前にはかなさが残る 明るくすべて受け入れ 天使のように生きられると 思っていたわけではないが もう少しましに 暗くどんよりとした日々に おのれが負けそうになることを 押し戻すぐらいの明るさは 身についていると思ったが …
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