衝撃の告白

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 彼女と逢ったのは,雪の降る3月だった。それははじめての出逢いではなかった。
 実は,彼女とは幼稚園がいっしょで,小さい頃はよく家にも遊びに来ていた。
 あれから30年以上の月日が経っていた。その面影や印象とはまるでちがう女性が立っていた。
 「横田敦子です。お久しぶりですね」
 たしか,旧姓は斉藤といって斉藤んちの「あっちゃんと」と呼んでいたはずだ。
 「翔ちゃんもずいぶん変わったね。わたしもおばさんになっちゃったけど」
 それはそれでまた不思議な感慨がある。たぶん子育てや家庭のことでいろいろと苦労してきたのだろう。目じりの皺や,顔の陰影にその雰囲気が見え隠れする。ただ,少し丸顔で温厚な顔の表情は,見ていて人を安心させる。あっちゃんはきっといい人生を送ってきたのだろう。
 「あっちゃん,どうして看護師さんになったの。もしよかったら聞かせてくれないか」
 わたしは交通事故で下半身をつぶされていた。たぶん,これからわたしは車椅子での生活がはじまると思う。それでもなんとか生きていてよかった。少し気分が落ち着いてきたときに,彼女がこの病棟にあらわれたのだ。
 「患者さんに,私的なことは言ってはいけないんだけれど,翔ちゃんだから,いえ,小さい頃の翔ちゃんになら言えると思う」
 わたしはその次の言葉を,静かに待った。ベッドに横たわるわたしの顔にあたたかい吐息がかかってきた。
 「あたしは実は夫を殺したの。何年もかけて。お酒に薬を入れて。最後は急性心筋梗塞で,司法解剖もされなかったし,病死ということでわたしはなんの罪にも問われなかった」
 わたしはたぶんそんなことかもしれないと,冷静に話の続きを待っていた。
 「殺されると思った。すごい酒乱で,あんな暴力ははじめてだった。警察を呼んでも,警察はあまりとりあわなかった。なぜだと思う。夫はわたしにケガをさせたり傷跡をつくったりするような暴力はふるわなかった。わたしを裸にして陵辱したの。口では言えないことを,わたしの体とこころをずたずたに壊して,それでますますお酒を飲んで笑うの。ほんとは酒乱なんかじゃなかった。巧妙な変態陰獣だったのよ」
 わたしはあっちゃんの目の中に殺意を感じていた。もしかしてわたしも・・・。
 「ごめんね,変な話しちゃって。さあ,そろそろ点滴代えましょうね」
 下から見上げる彼女の顔はきらきら輝いていた。
 なぜ看護師になったか,その答えはきっとその代える点滴の中にあるのだろう。
 「あっちゃん,ありがとう」
 わたしはこころからあっちゃんにお礼を言った。あっちゃんも包みこむような笑顔で応えてくれた。








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この記事へのコメント

シロ
2005年03月05日 20:05
な・・名前を出して・・大丈夫なんですか・・
死ぬまでに書き残したいこと
2005年03月05日 20:14
これはすべて架空のショートショートです。
実名ではないので,大丈夫,マイフレンド。
シロ
2005年03月05日 20:50
な・・なるほど・・・いやいや失礼しました・・マイフレンドって私??w
(どきどき)
死ぬまでに書き残したいこと
2005年03月05日 20:59
そういうことにしましょう。

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