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無欲という欲

苦しみを浴びながら 今まで欲にもてあそばれてきた ここまでたどりつき 痛みやむなしさや せつなさや絶望感に 錐揉みぐちゃぐちゃにされながら とうとう無欲という欲にたどりついた ここにはお金もなんの意味もなく 明日も今日もなく 苦悩もあきらめもなにもない ただ真空の風が吹き …
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ひとり

生まれたときに泣かなかった 今でも泣いたことはない 泣くことは演じること 声は演出 自然に なにもできない 人工的なものに囲まれて 生きることを実務と ただ今まで ルーティン通り 生きて 余命を終える だれかの声が 年の瀬の鐘のように 耳をすべってゆく …
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帰りたくない日

やることなすこと徒労におぼえ 気力もことばもなにも出ない 前から何か 知り合いの笑顔 抱き寄せ笑い合う親子 チキンを買う列に並びながら 思わず顔を伏せる 今日はケーキもチキンも食べたくない 一人で暗い映画館の椅子で まどろみながら ただ無になること 存在を消し去ること …
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踊るべきは君なのだ

竹笛のかすかな鼓膜にささやくような音 傀儡はふと首を180度後ろに向けた 刺客は眠っている 青い梅の夢を見ながら 天地を支えている大亀に 甘く薄めたアヘンの煙を 吹きかけるいたずら まるで命は知らない国での忘れもの 剣からほとばしる光はオレンジに または真っ白な雪に溶けて なに…
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冬あそび

かじかんだ手から月のしずくがこぼれ落ちる 歩く道は土だ いつかのあの日の石ころが 緑色に光っている 寒い夜 記憶とせん妄が往き来して 足は谷間に向かっている 校舎の裏庭で煙草に口をつけたとたん まぼろしはクチナワに変わり やがて魂は真っ黒に壊死してゆく 夜は友だち 見えな…
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いさぎよく

いさぎよく生きるとは あらゆる困難の前で 静寂な時をきざむこと 今与えられたことを ゆるぎなく遂行すること あたえられた時間に 満足しながら ただひたすら 一秒の一億分の一まで あますところなく 使い切ること
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取り切れていない癌が残る

それもまたそれ かくあることを 受け止めて 道を歩く 歩きながら 股間にあたたかいものが あふれてゆく また聖水があふれだし パットをあつくする もしかしたら それは美しい射精かもしれない なくしたものを 生まれたての行為で代行する 新しい射精かもしれない …
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夢でよかった

山道を車で走る 大きな左カーブを 減速せずに まるでガードレールを突き破り 左下の湖に呼ばれているかのように 思い切りアクセルを踏みこむ あわやというところで 車はガードレールを擦りながら なんとか右車線にバウンドして 対向車と面会することなく 左車線にもどったとたん 前…
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いつもここに

前立腺がなくなってから 尿が自然に漏れてくる 紙パットで陰部を包み 紙パンツで外部の汚染を防ぐ トイレに行っても チョロチョロと漏れ出し まるで栓の閉められない水道の蛇口 にんげんはひとつのものをうしなうと さまざまなうれいやかなしみをさずかることになる いつかこの世界で だれ…
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経過不良

小さな齟齬がアラレのように降りつもり いつの間にか そこは廃墟となった コンビニ カー用品店 書店 雑貨屋 ラーメン屋 次々と店主が変わり とうとう更地のまま 十年が過ぎた 流行らない時は 場所と運を選ぶ あの頃の虫歯が痛むのか もうすぐ 新しいア…
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明るくふるまいたいけれど

なかなかそうはいかない 失った機能や臓器を前に 笑いの前にはかなさが残る 明るくすべて受け入れ 天使のように生きられると 思っていたわけではないが もう少しましに 暗くどんよりとした日々に おのれが負けそうになることを 押し戻すぐらいの明るさは 身についていると思ったが …
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よりどころ

かたまる表情 だれになにを聞いて 心が上の空になり 響いている 腹の底でミミズがうめいている このからだはどこからきた生命体か それとも人口の製造物か ところどころに欠陥があり 穴が空き 指で押すと茶色い花が開く 不気味な交配を繰り返し たぶんここまで配偶者は 頭の…
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少しだけ望むこと

あと数年は生かしてもらいたい やり残したことや 新しくはじめたいこと 少しでも時間がほしい ぜいたくな望みでも かなえられることを夢見て 今日いったん退院します
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この世に争いをなくすために

だれでも目の前で本音を言おう すべて自分だけ守られたところで 強気な虚勢を張っても 守るべき老若男女を犠牲にして 偉いやつはみな大事なことを ひとりの命のためにでなく 大義名分のため ずっと昔から変わらず 攻撃的に実は 自分だけシェルターの中で 家族団らんを楽しみ ほんと…
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生きること

点滴の針が刺さる腕に 魂を注入したいと思う 薬は延命のためじゃなく 湧き上がる溌溂な 水に弾ける肌と 朝日に群がる不死鳥と 燃え尽きることのない魂の火 世界は熱い友情を大気圏に飛ばし合い へたな小細工や脅しはいっさいあきらめた アポロで月に行ってから そろそろ太陽系をやり過ごし…
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生きる嘘 羽が生えたような嘘 鏡の前で嘘ついて泣いた ほんとうのことが 山のようにゴミ箱に積みこまれ 嘘でよかった 笑いたかった それでも背中が震えていた ほんとうはどこまでほんとうなのか 嘘は許されることもあるのか 死んだ人も嘘をつく 生きていれば なおさらお天道…
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新しい夢を買いにいく

昨日の夢はいいところで終わり 明日の夢を買いにいこう 大空にはばたく どこまでも続く大海原を 見えた大陸の影が 一歩を踏み出す前に 夢が途切れ 朝の気だるいはじまりに 重い身体を起き上がらせ カバンに詰めこんだ憂鬱と 近づいてくる手術と入院に 心は押しつぶされそうになって…
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社会保険労務士

勉強をはじめた 失業 傷病手当 国民年金と付加年金 第1号厚生年金保険 第2号厚生年金保険 雇用保険 労働災害補償保険 外国人雇用 障がい者雇用 特別支給老齢厚生年金保険 労働者派遣法 高齢者の医療の確保に関する法律 最低賃金法 すべて自分の身で経験した…
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ながらへば

時計の中に人がいる 鏡に映る顔はだれの顔 小さな自転車をこぎながら タイヤのはずれた音がする この家はだれの家 夢から覚めてもまだ 小人たちが台所の隅で ひそひそ話をしている ニンジンをかじっているのはだれ さみしくてなつかしい口笛を吹くのは もしかして姉さん とうのむか…
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新しい挑戦

何から何まで すべて新しく 生まれ変わる 手術も試験も 毎日も ことばも 覚えたての 繰り返しから 生きるために 食べたい 飲みたい 暑い 寒い いやだ うれしい ほしい それから もっと 微妙な感情も はじめから も…
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前立腺全摘出手術決定

予定通り あっと言う間に決定 迷いなく ただ 一抹のさみしさと 希望へのひとすじの光が 交差する 今までありがとう これからも 新しい門出 また再び歩きはじめる この世界のずっとずっと先まで 尿もれ対策は前立腺摘出手術前が勝負!メジロミチオメジロミチオユーザレ…
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残らない夏

叫びたくなる クレーン作業中 空が落ちてくる 1枚の絵が風に舞い 白い壁が眼下に サングラスが光る 紅い花が咲いている 緑の網膜に映るゴンドラ 足場から空気が上昇 さかさまに転落 真空を落下する白い羽 作業の真ん中で 誰かがクシャミをして 我にかえる ま…
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骨シンチグラフィ

骨は笑っている カラカラコロコロ 四角い物体が目の前をふさぎ じくじくと溶けてゆく時間 波は移りながら 遅い殺し屋の集合を待つ 相変わらず検査は退屈 血尿は止まらず 順番は後先に ゆっくり時は骨の髄をかけめぐる だれも残らないラウンジで あくびをした黒服は 検査着を…
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前立腺癌発覚

それも悪性 グリーンスコア8 骨転移危惧 血尿つづく 真っ赤な血のオシッコが 白い便器の花と咲く 恐怖は忘れた頃に再来し 笑いが止まらない 泪の出ないかなしみ 喉からなにかいたたまれない くるしさがこみあげ また血のションベンを出しにいく 蛇口のない水道から …
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バーンアウト

走りながら感情は傷ついていった まじめに真剣に走れば走るほど さまざまな軋轢が増して 理想が現実の棘で切り裂かれていった ボロボロになりながら 虫の息でまだしがみついている それもきっと遠からず決着がつくことだろう それでも最後まで 倒れても 傷だらけになっても そこまでは走り…
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夫婦のあり方

二年生 いまだ 打ち解けない 心を開かず おたがいの世界に生きる 会話は必要な時と気が向いたら 家事はバラバラ 不機嫌はいつものこと 夜は別々に寝て 起きる時間もまちまち 朝昼夕とご飯はいっしょに食べない 家族というより同居人 シェアハウス婚と名づけ 淡々と日…
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花火大会の夜

ひとり映画館 暗い画面 光が見えない 画面が黒い 世界は見えない 何か明らかに楽しいことが 花火より先に消えてゆく いずれ自分も消えてゆく 怖くはないが パッと花開かず 真っ黒の画面から いつの間にか 消えている いつ消えたのか まったくわからない
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山の日

山盛りのご飯 食べながら 何か無力な 生きる喜びがほしくて 夢が悪夢の負けてばかりの長距離走 トラックを人の背中を見ながら どんどん引き離され 追いつけない 息苦しくて もがいてももがいても ゴールは見えない 現実も夢も 憂うつな朝を それまで 寝汗をか…
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説得できない

理屈ではない 何か自分にも欠けている 情熱とか 自信とか 熱意とか 根気とか すべて今は自分にはない 気持ちが向かっていかない 悲しい さびしい 情けない 苦しい 抜け出せないアリ地獄 ディベートの達人が教える説得する技術 ~なぜか主張が通る人の技術と習慣~フォ…
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オリンピック

遠いもの 国 試練 薬物 英才トレーニング 約束 悔やみ 泣きながらメダルを獲る 使命感 常識外 個人的に厭悪 触りたくない 取り上げることはない 世界は平和だけではない テロの不安 被害者 加害者 国家的陰謀 陰にいる人々 …
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